2017年4月26日水曜日

エピローグ、ゆめのキセキ 〜そよ風の記憶〜



3月1日、僕はまだ栄にいた。






最終公演後、カフェに顔を出してくれた彼女を見送るため遅くなったこともあるが





どうしても…





どうしても


すぐに栄を離れる気にはなれなかったのだ。





朝から錦通りを歩きながら、昨日のことを思い出していた。





なかなか去ろうとしなかった冬将軍が何かにその背中を押されたように


穏やかな日差しに包まれている。





心地よく吹き抜けるそよ風は…


最後まで凛として清々しかったゆめちの微笑みを想起させる。





発表からわずか1ヶ月、慌ただしい日々の中で、彼女が残してくれたもの…




そこから生まれた数々のキセキは


一層強い輝きとなって記憶されることになるだろう。




地元で実現したネクストポジションLast live !!


熱きリクエストが実ったAKB48SHOW!


楽屋の張り紙を前に満面の笑み


ゆめち初のバレンタイン公演!


熱き魂は受け継がれる〜坂本真凛生誕祭


珠理奈と実現!「赤いピンヒールとプロフェッサー」


名門大洋フェリーがゆめち特別CMをオンエア!


ニチレイ、イタメくんからのグッズとお手紙!


社長からも!てんやの皆様からの色紙!


怒涛のラジオ出演での成長もまたキセキ!



タワレコ、ナゴパル店に見参!とにかく自分から動く!


2ndアルバムに間に合ったというキセキ!


AKB48SHOW! 素晴らしすぎるオンエアに驚愕!


幕張で実現した伝説のアップカミングステージ!


最後の握手会にて「窓際LOVER」を後輩とフルート共演!


最終活動日がちょうど6期4周年であり最終公演 !!


センターはシアターの女神!


研究生楽曲「夕立の前」を早々に昇格した李苑と共に!


これが等身大のゆめち「コスモスの記憶」


#野口由芽卒業でトレンド入りしたーい!



見事 twitter トレンド入り!達成!!



公演終了後、カフェに降臨!


この1ヶ月、いや…


この4年間で起こったことすべてが、キセキだったのかもしれない。




また会える日を楽しみに…Good luck ゆめち!!!

2017年4月21日金曜日

"コスモスの記憶” シアターの女神、野口由芽 最終公演!vol.3


『私が以外と泣いてないのは、卒業の実感がないからです』


そう言って微笑む ゆめちのその笑顔は、魂からの”輝き”に満ちていた。





▪ 卒業ロードへの決意


最後まで、これほど卒業する本人の涙腺がほとんど緩まなかった清々しい公演も珍しいだろう。

だが一方で、そこに至るまでには、18歳の普通の高校生では到底経験しえない、悩みに悩んだ "苦悩の決断" があったことを見逃してはならない。


昨年6月、事実上の決め手となった総選挙新潟決戦に向かうにあたって


『入れたら続け、入れなかったら諦める。もしくはその逆。というわけではなく、結果を受け入れてから自分の心に従う。』


という、彼女なりの覚悟を持ってのぞんでいたことが後にブログなどで語られている。


もともと学ぶことが好きで大学進学の意思は念頭にあったが、SKEとの両立を取るかどうかで悩ましい日々が続いていたようだ。




運命の6.18



イベント進行中、ついに最後まで彼女は、その席から立ち上がることはなかった。





歓喜の速報70位からの、あまりに残酷な結末…



『 もう、炒めるものがありません… 』


先輩、松村香織のカメラに捉えられたゆめちは、明らかに燃え尽きているように見えた。




だが、幸いにも始まったばかりの『重ねた足跡公演』でセンターを任されることが多いという状況が、抜け殻のような彼女を奮い立たせてくれた。心機一転、バッサリと髪を切り、サイリウムの色も変えて何かを吹っ切るかのように、再びガムシャラに走り出した。



ただ一方で、学校での進路指導も厳しさを増す中、一旦卒業へ舵を切らざるを得ないものの、どこか諦めきれず釈然としない気持ちのまま志望校も決められないという、もどかしい状態が続いていた。


ここで 9月、圏外だったメンバーだけで開催された神奈川県民ホールでのコンサート『来年こそランクインするぞ決起集会』において”総選挙延長戦”と題して、81位から100位までのメンバーがサプライズで発表された。



第85位、野口由芽




その明確な順位に、鬱積していたモヤモヤが晴れたのか、ここまで来れていたんだ…と肯定的に受け止めることができ、彼女なりに気持ちに一定の整理がついたようだった。

同じく83位であった、卒業を模索していた同期、東李苑と踏み込んだ話し合いが行われたのはこの時期であろう。





















だが一筋縄ではいかない。



速報から圏外になったメンバーは、翌年跳ねる!という傾向もあり、来年こそは!そう言って握手会などで激励されることで気持ちは揺れ動いたに違いない。進路に対する質問にも、曖昧な返答を繰り返す日々…。


結局、志望大学の選定やその後の合否、SKEとの両立を選ぶかも含めて最終決断がソロコンサートの頃(11月)までズレ込んでしまったというから、高校3年の秋まで進路に悩むという状況は、想像以上の心理的負担だったに違いない。



なぜそこまで…



総選挙ランクインへの並々ならぬこだわりと共に、公演に対する人一倍熱く真摯な取り組み方や、この日の後半MCで思わずもらしていた、実は『役職に就きたかった』という発言からも察することができるように、決しておおっぴらには語ってこなかったものの



彼女はSKEを背負いたかったのだ!




これはよくあるメンバーの「SKEに必要とされる人になりたい」のような、ある種のリップサービスではない。もっと踏み込んだものだ。すでにリーダー的な役割を念頭において活動していたと考えれば、今思い返してみても納得できることが多いのだ。


真のSKEファン、ヲタであればどうか、そのあたりの心情を汲んでやってほしい。


こうした想いとともに、総選挙ランクインにシングル選抜、足のケガなど、かなえられなかった目標や挫折があったからこそ…苦悩の末に学業に専念と決断したからには


絶対に最後まで前向きな卒業ロードにしてみせる!


という強い思いに至ったのではないだろうか。
 



『メンバーがブレるとファンもブレる』



とは大矢真那の言葉だが、ゆめちが仮にもっと未練を残すような姿を見せていたら…

ファンも『なぜあの時もっと自分は頑張れなかったのか?』と思いを残すことになりかねない。



『すべてに感謝してアイドル人生を終えたい』


クライマックスとなる卒業セレモニーでも、その姿勢は貫かれていた。




▪ 同期、そして研究生時代への想い『夕立の前』




セレモニーに至るオープニングは、シングルへの初参加となった6期生中心の当時の研究生ナンバー『夕立の前』

”今まさに恋にぶつからんとする、荒々しい心情を夕立が来る空模様に例えた”リクエストアワー2015でも1位に輝いた人気曲を、なんと当時早々に昇格して参加できなかった同期、東李苑を加えて披露!


スタッフに頼んで、その衣装まで李苑オリジナルのものを用意してもらったという、ゆめちの細やかな心遣いがなんとも心憎い。

ちょうど4周年でもあるこの日、ステージに揃った6期生は”6期の時代到来”を印象付けたリクアワ2015のときと比べても、ゆめちが言った”強さ”を感じさせるに十分なほど、各人がたくましく成長を遂げていた。



かつて、当時の研究生の前に立ちはだかった黒く巨大な雨雲。

ドラフト制度に大組閣…。



だが彼女たちはくじけなかった。


不安定なブランク期間を乗り越えて松村香織、犬塚あさなを中心に様々なアイデアを持ち寄り、一から皆で作り上げた、伝説の『アップカミング公演』。常に次があるかどうかも定かでない状況でこの野心的な試みに満ちた新公演を大成功させたことは、ゆめちにとっても一筋の光明となりわたしの財産とも言えるほどの貴重な経験となったのだ。



『あのコールの嵐を絶対に忘れません。』



後にそう語られたように幕張での最後の握手会で実現した奇跡とも言えるアップカミングステージは異様な盛り上がりを見せた。再現されたヲタの完璧なミックス、全体から湧き上がる地鳴りのようなコールは正規メンバーをも巻き込んだ当時のこの公演の伝説的な”熱さ”を物語っていると言えるだろう。




▪ でも忘れない君がいたこと



MCを挟んで、僕は『枯葉のステーション』を予想していた。


だが、そこに現れたのはカラフルな花に彩られた6人のメンバー!井田玲音名、山田樹奈、福士奈央、都築里佳、そしてつい2日前に卒業公演を終えたばかりの元チームSリーダー矢方美紀!ゆめちと特に縁の深い、大好きなメンバーと披露されたのは


『コスモスの記憶』





この曲は4thシングル『1!2!3!4! ヨロシク!』のカップリングであり、ゆめちが『SKE加入前に一番好きだった曲』である。



(以下前略)


コスモスの花は  きっと知ってるだろう

ずっと 遠くで見てた 

僕は陽射しのように…

初恋の記憶は 気づかれない切なさ

でも忘れない君がいたこと



信号が赤になり 



トラックに追いついて



助手席の君が今  



泣きながら手を振った




コスモスの花は どこか淋しく見える 

何も言わずに揺れて 

季節 見送るだけさ

薄紅の記憶は 心の片隅で 

もういなくなる君の微笑み 

でも忘れない君がいたこと





彼女は親が転勤族であったことから、おそらくこれに近いイメージの経験や淡い記憶があるのかもしれない。


コスモスの花言葉は ”少女の純真” である。


まるで卒業にあたって、花を愛する彼女のために作られたかのようだ。



そしてこの詞は、見送る我々の心情にも見事なほどに重なる。この曲を聴くたびに、ときめきと切なさと…ほんのりとした胸の痛みが、その微笑みの記憶と共に蘇るのかもしれない。



▪ 『私はこれからも踊り続ける』




『結婚するみたい!』


と思わず言葉が漏れるほどゆめちにぴったりなヴェール付きの真っ白な花冠に花束。



セレモニー冒頭、残念ながら不在となった松井珠理奈からSKE伝統のその”熱さ”を受け継ぎ、力を尽くしてくれたゆめちへのねぎらいと感謝、励ましのビデオメッセージが流される。


松村香織からの手紙では同じ研究生時代、犬塚あさなと共に6期生の育成に散々苦労した話や、その中でゆめちが常にリーダーシップを取ってきたこと、同期、竹内彩姫と共に身を削りながら数々のアンダーを務め、公演を支え続けてきたことなどが語られた。

ともに決して恵まれない境遇のなか、苦しみや喜びを共有してきた大切な仲間として「ゆめちのことは同期だと思っている」と語られるほどに濃密な時間をともにしてきたのである。

さらに天丼チェーン”てんや”への愛や、ゆめちならではの”炒飯キャラ”など、チャンスを掴もうと貪欲に自ら発信し続けたことなど、その奮闘ぶりが涙と笑いを交えながら読み上げられ、何とも言えぬ暖かい雰囲気に包まれる。


続いて、本人から高校を無事卒業できたこと、足のリハビリからもようやく解放されることが伝えられ、安堵したファンからの温かい拍手が送られた。


あらためて『真っ直ぐに、これがやりたいということが見つかったから』という希望ありきの卒業であることに加え



『私はこれからも踊り続ける』



『SKEとは違うステージにはなってしまうのですが、また別の世界で私の踊っている姿を見ていただけたらなって思ってます』


という力強い言葉を聞けたことが、ゆめちを惜しむ我々ファンにとって何よりの救いになったに違いない。



▪ 気づかされた、もっと大切なこと



『 SKEで最後の曲といえば、この曲!仲間の歌!』


冒頭のゆめちの言葉に続いて最後に紹介された曲は、SKEの賛歌とも言える『仲間の歌』







慣れ親しんだ『制服の芽』公演だけでなく、コンサートなどでも最後に歌われることが多いこの曲。『人の支えの大切さに気づいた』という彼女の、メンバーやスタッフ、出会ってくれた全てのファンへ向けたストレートな想いを代弁する1曲だろう。


さらに、ゆめちにとっては2014年の夏、美浜海遊祭において犬塚あさなと共に正規メンバーへの昇格発表後に嬉し涙があふれる中、披露された思い出深い1曲でもある。


『確かに、総選挙ランクインや、同期が次々と手にしつつあるシングル選抜というポジションを手にすることができなかったのは、やり残したことかもしれない』


セレモニーでもそう語った彼女だが、その実に晴れやかな笑顔は…48グループメンバーであれば誰しも避けることのできない過酷な状況のなかで、学業との両立で何度もくじけそうになりながら…時に喜び、時に苦悩し、葛藤し続けたその過程において



『もっと大切なことに気付けた』



という”悔い” を越える ”大いなる感謝” に満ちあふれていた。



これはちょうど、秋元康の『365日の紙飛行機』の歌詞にも重なる。




その距離を競うより

どう飛んだか

どこを飛んだのか

それが一番大切なんだ

さあ 心のままに

365日




僕たちは知っている。



ゆめちが、どんな想いで『どう飛んだか、どこを飛んだのか』を!

我々ファンに対しても『もっと大切なこと』を気づかせてくれたのは、あなたです!!




ゆめち!4年間、本当に本当にありがとう!!!



2017年4月13日木曜日

"不器用太陽” シアターの女神、野口由芽 最終公演!vol.2


「 私は4年間で本当にたくさんの人に出会って人の支えの大切さに気付くことが出来ました 」




ダンスメドレーを挟んで後半、


"不器用で臆病な主人公のもどかしい恋模様” が、せつなくも熱く綴られる「不器用太陽」へ続く中…挫折も多く味わったであろう、ゆめちのSKE人生の中で特に重くのしかかった「足のケガ」との戦いがオーバーラップする。



昨年9月、思わしくない状態のまま強行出演した結果、公演中に悪化、



悔しさのあまり涙…涙となった「不器用太陽」。



高校3年の夏、総選挙の結果を受け「卒業」の二文字が眼前に迫る中、その手先の器用さに反して、もどかしくも不器用な彼女の心模様。




なぜ、そこまでして…?




既に2014年から、その兆候は見られており、15年5月にはついに劇場公演を約2ヶ月間休演に追い込まれるに至る。


完治は難しい症状の中、なんとか復帰するも…だましだましの状態が続く。


そんな、時に心が折れそうな状況の中で、彼女を支えその視野を広げてくれた、ある恩人とも言える大先輩の姿があった。




宮澤佐江である。




ケガとの戦いは、48グループの歴史でもある。



佐江ちゃんの同期、梅田彩佳が長期離脱に追い込まれたことや、残念ながら卒業まで追い込まれることとなった柏木由紀の名ユニット曲「てもでもの涙」での相方、佐伯美香やSKE1期生の松下唯。常に腰爆弾を抱えていた松井玲奈など、挙げればキリがない。



そんな数々の仲間の葛藤を間近で見てきた彼女には、ある確信があった。かつて佐江ちゃんはAKB新聞誌上でこう語っている。




心の片隅で「卒業したい」と思ってる子がいたら、その言葉は弱音ではないのかなって、もう一度考えて欲しいです。このグループでできることはやったと思える日が来るまで、卒業を考えたらダメだって思う。 


私は10年たって「佐江ちゃんお疲れ様でした」って自分に言えます。


前に出られなくて、卒業したいという人はいると思う。握手会もファンが来てくれなかったり、選抜に入れなくてやめようって子もいるかもしれないけど、例えば劇場公演で何を頑張ってるか、何が1番になれたか。私って何を頑張ったんだろう?とクエスチョンマークが1つでもあるなら、まだ「その時」じゃない。




おそらく、これに近い助言がゆめちにも届けられたことは想像に難くない。





ただでさえ考え込みやすい性格のゆめちにとって、太陽のように温かく包み込みながら、その視野を広げさせてくれた佐江ちゃんの存在は、とてつもなく大きいものだったに違いない。


偶然にも宮澤佐江卒業公演の翌日、4月1日のS公演でゆめちは当時の新曲「チキンLINE」のセンターに抜擢された。


「死ぬ気でやる!」


とまで言い放った彼女は、このチャンスを掴まんと佐江ちゃんへの万感の想いを込めて、ケガをものともしない鬼気迫る全開パフォーマンス!を見せてくれた。





ただ、その後しばらくして事件が起こる。


おそらく、当時の彼女の事情を把握していない関係者から研究生時代と比較されるかたちで、公演の辛口評価を受けてしまったのだ。


SKE48勝手にプロデューサー!(笑): まじめキャラ卒業宣言!逆襲の野口由芽!


おそらくこの頃だろうか?卒業前のラジオ出演で「今だから話せる」として明らかにされていた、ケガとの葛藤を誰にもぶつけられず一人で泣いていることの多かったという彼女がマネージャーに促され


「(足を)折れっていうんですか!!」


とまで、その心情をあらわにしたのは…。



悔しかったに違いない。ケガが完治しない以上、何とかその他の表現力などで違った魅せ方を模索していたのだから…。


壮絶なるマジで反抗する彼女の意地。



もちろん、誰も無理をしてケガの悪化など望んではいない。

こういうタイプは時に冷水をかけることも必要だろう。ただ、そこを乗り越えてでも体現したい、ゆめちなりのSKEの一員としての燃えさかる情熱を否定することもできない。



バレエ経験とパフォーマンスから入るファンの多い彼女ならではのプロ意識。かつて憧れたチームSの一員としての誇り、そこから来る「わたしを通して少しでもSKEの魅力を伝えたい!」という想い。


アイドルという、ある種の色眼鏡で見られがちなジャンルの中で”楽曲”の持つ魅力を自身を通して伝えたいという、元ファンでもある彼女のこだわり。



すべては やはり ”for the SKE48"



宮澤佐江だけではない。松村香織、加藤るみ、矢方美紀、宮前杏実などに導かれ、いつしか彼女は、傷つき葛藤するにつれ、より輝きを増し、”SKE魂” とも言える、その”熱きバトン”を受け継ぐ継承者となっていた。



アンコール!



「放課後レース」「チームS推し」「僕は知っている」



さらにクライマックスとなる卒業セレモニーに至るダブルアンコールへ!!

曲の盛り上がりに比例して、ファンの4年間の”限りなき想い”も加速していく!!!



(つづく)

SKE48勝手にプロデューサー!(笑): "コスモスの記憶” シアターの女神、野口由芽 最終公演!vol.3

2017年4月7日金曜日

"強がり時計” シアターの女神、野口由芽 最終公演!vol.1


「 SKEでの4年間をやりきったって、自信を持って言うことができます 」




去る2月28日、我らが ”シアターの女神”(ヴィーナス)”ゆめち”こと野口由芽が、チームS「重ねた足跡」公演にて、実に晴れやかな笑顔と共に、SKE48での全ての活動に終止符を打った。



1月25日の突然の卒業発表から約1ヶ月。



当初、あまりに短すぎる卒業期間に戸惑わされたものの、逆にこれがスケジュール的にもファンの想いとしても凝縮されるという効果を生み出し、非常に濃密な充実した卒業ロードとなるに至った。



我々ファンの熱きリクエストが実る形となった、総選挙ランカーでもない、シングル選抜でもないメンバーとしては破格の扱いとなったAKB48SHOW!への出演を始め、ラジオを中心とした彼女を惜しむ各方面からのオファーなど、劇場や握手会でも実現した”数々の奇跡”と共に、本人にもファンにも決して忘れ得ぬ疾風怒涛のラスト1ヶ月となったことは間違いない。



ブログなどでも語られていた通り、単に「足を怪我したから」ではなく、これから「進学を目指すから」でもなく「将来を見据えて春から大学へ」という、今までの活動の延長線上に見えた、あくまで明確な希望ありきの前向きな卒業発表にしたかった!というところに彼女のこだわりが見て取れる。



この日も見受けられた彼女の前向きな姿勢、自然体で心からあふれる笑顔、未来を見据えたしっかりとしたその言動にはもはや、かつてのデリケートで涙もろい印象が強い、ネガティブな少女の面影はなく、見事にたくましく成長した間もなく大学生となる”大人のゆめち” がそこに存在していた。



自己紹介MCでも、まず語られたのは、この日をもって6期生がお披露目から、ちょうど4周年を迎えたことと、こんなにもたくさんのファンに出逢えたことへの”感謝”からであった。


この日も2015年、足のケガからの復帰を機に名乗り始めた ”シアターの女神(ヴィーナス)” は最後までその名に恥じぬ進化を見せてくれた。





屈託なく明るく元気なオープニングナンバー「Gonna Jump」「手をつなぎながら」から一転、”少女の胸の奥に潜む狂おしい情念” を歌った「innocence」へ。


長年、あの松井玲奈の名曲「枯葉のステーション」を誰よりも説得力を持って歌い継いできた彼女らしく、指先まで神経の行き届いたしなやかさと、物憂げな表情の中に時折小悪魔な笑みを織り交ぜながら、我々をゆめちワールドへ誘う。


「強がり時計」では”不器用な主人公のせつなすぎる悲恋” を自身の不器用な性格にナチュラルにシンクロさせることで、思わず粉雪降りすさぶ詞の情景が浮かんでしまうほどに、胸が締め付けられるようなパフォーマンスが眼前に迫る。



「 純粋すぎるがゆえに垣間見えるある種の狂気、情念 」



松井玲奈に通底するその魅力は、特に陰影のある曲でこそ、その真価を発揮するのだ。



それだけではない。18歳の彼女が最も楽しんで意欲的に取り組んでいるように見えたのが、この日は残念ながら休演となった松井珠理奈のソロナンバー「赤いピンヒールとプロフェッサー」だ。





”大人の恋に憧れる小悪魔な女子大生の背伸び感” が魅力の一曲である。



小学生時代から培ったバレエ仕込みの、しなやかで流麗な動きとシルエットの美しさ、手先の器用さとセンシティブで職人気質な性格が反映された、細部に魂を宿らせんばかりの指先から足先まで神経の行き届いた繊細な表現が光る!


ゆめちらしい清楚感溢れるCUTEな背伸び感と相まって、珠理奈の問答無用の貫禄パフォーマンスとは全く異なるオンリーワンの魅力が存分に発揮されていた。基本的には、地味な雰囲気の優等生タイプである普段の彼女とのGAPも大いに楽しめる1曲となっている。



数回前の公演では、まさにその珠理奈とペアでの「赤ピン」という奇跡の共演が実現したのだが、全く気負うことなく喜びに満ちた表情でやりきっただけでなく、この日も見せてくれた繊細な表現はその指先から、まるで”魔法のようなオーラ”が放たれているのでは?と見まがうほどの、思わず息をのむような美しさにまで昇華していた。



かと思えば、清涼感あふれる片想いナンバー「コップの中の木漏れ日」では、その爽やかな純白衣装と共に”淡い恋の対象として憧れられる無垢な少女” への抜群のフィット感を感じさせてくれる。





ある時は大人びた表情、ある時は可憐な少女…



この年齢特有の魅力が曲によって目まぐるしく入れ替わり、それぞれ今しか出せない”ゆめち”となって凝縮されていた。



”シアターの女神”に偽りなし!



幸運にもその最後に同席できた僕の目に飛び込んできた彼女は、まさにアイドルとして 心、技、体 ともに臨界点を迎えた



”可憐で美しきヴィーナス” そのものであった!



(つづく)

SKE48勝手にプロデューサー!(笑): "不器用太陽” シアターの女神、野口由芽 最終公演!vol.2