2017年4月21日金曜日

"コスモスの記憶” シアターの女神、野口由芽 最終公演!vol.3


『私が以外と泣いてないのは、卒業の実感がないからです』


そう言って微笑む ゆめちのその笑顔は、魂からの”輝き”に満ちていた。





▪ 卒業ロードへの決意


最後まで、これほど卒業する本人の涙腺がほとんど緩まなかった清々しい公演も珍しいだろう。

だが一方で、そこに至るまでには、18歳の普通の高校生では到底経験しえない、悩みに悩んだ "苦悩の決断" があったことを見逃してはならない。


昨年6月、事実上の決め手となった総選挙新潟決戦に向かうにあたって


『入れたら続け、入れなかったら諦める。もしくはその逆。というわけではなく、結果を受け入れてから自分の心に従う。』


という、彼女なりの覚悟を持ってのぞんでいたことが後にブログなどで語られている。


もともと学ぶことが好きで大学進学の意思は念頭にあったが、SKEとの両立を取るかどうかで悩ましい日々が続いていたようだ。




運命の6.18



イベント進行中、ついに最後まで彼女は、その席から立ち上がることはなかった。





歓喜の速報70位からの、あまりに残酷な結末…



『 もう、炒めるものがありません… 』


先輩、松村香織のカメラに捉えられたゆめちは、明らかに燃え尽きているように見えた。




だが、幸いにも始まったばかりの『重ねた足跡公演』でセンターを任されることが多いという状況が、抜け殻のような彼女を奮い立たせてくれた。心機一転、バッサリと髪を切り、サイリウムの色も変えて何かを吹っ切るかのように、再びガムシャラに走り出した。



ただ一方で、学校での進路指導も厳しさを増す中、一旦卒業へ舵を切らざるを得ないものの、どこか諦めきれず釈然としない気持ちのまま志望校も決められないという、もどかしい状態が続いていた。


ここで 9月、圏外だったメンバーだけで開催された神奈川県民ホールでのコンサート『来年こそランクインするぞ決起集会』において”総選挙延長戦”と題して、81位から100位までのメンバーがサプライズで発表された。



第85位、野口由芽




その明確な順位に、鬱積していたモヤモヤが晴れたのか、ここまで来れていたんだ…と肯定的に受け止めることができ、彼女なりに気持ちに一定の整理がついたようだった。

同じく83位であった、卒業を模索していた同期、東李苑と踏み込んだ話し合いが行われたのはこの時期であろう。





















だが一筋縄ではいかない。



速報から圏外になったメンバーは、翌年跳ねる!という傾向もあり、来年こそは!そう言って握手会などで激励されることで気持ちは揺れ動いたに違いない。進路に対する質問にも、曖昧な返答を繰り返す日々…。


結局、志望大学の選定やその後の合否、SKEとの両立を選ぶかも含めて最終決断がソロコンサートの頃(11月)までズレ込んでしまったというから、高校3年の秋まで進路に悩むという状況は、想像以上の心理的負担だったに違いない。



なぜそこまで…



総選挙ランクインへの並々ならぬこだわりと共に、公演に対する人一倍熱く真摯な取り組み方や、この日の後半MCで思わずもらしていた、実は『役職に就きたかった』という発言からも察することができるように、決しておおっぴらには語ってこなかったものの



彼女はSKEを背負いたかったのだ!




これはよくあるメンバーの「SKEに必要とされる人になりたい」のような、ある種のリップサービスではない。もっと踏み込んだものだ。すでにリーダー的な役割を念頭において活動していたと考えれば、今思い返してみても納得できることが多いのだ。


真のSKEファン、ヲタであればどうか、そのあたりの心情を汲んでやってほしい。


こうした想いとともに、総選挙ランクインにシングル選抜、足のケガなど、かなえられなかった目標や挫折があったからこそ…苦悩の末に学業に専念と決断したからには


絶対に最後まで前向きな卒業ロードにしてみせる!


という強い思いに至ったのではないだろうか。
 



『メンバーがブレるとファンもブレる』



とは大矢真那の言葉だが、ゆめちが仮にもっと未練を残すような姿を見せていたら…

ファンも『なぜあの時もっと自分は頑張れなかったのか?』と思いを残すことになりかねない。



『すべてに感謝してアイドル人生を終えたい』


クライマックスとなる卒業セレモニーでも、その姿勢は貫かれていた。




▪ 同期、そして研究生時代への想い『夕立の前』




セレモニーに至るオープニングは、シングルへの初参加となった6期生中心の当時の研究生ナンバー『夕立の前』

”今まさに恋にぶつからんとする、荒々しい心情を夕立が来る空模様に例えた”リクエストアワー2015でも1位に輝いた人気曲を、なんと当時早々に昇格して参加できなかった同期、東李苑を加えて披露!


スタッフに頼んで、その衣装まで李苑オリジナルのものを用意してもらったという、ゆめちの細やかな心遣いがなんとも心憎い。

ちょうど4周年でもあるこの日、ステージに揃った6期生は”6期の時代到来”を印象付けたリクアワ2015のときと比べても、ゆめちが言った”強さ”を感じさせるに十分なほど、各人がたくましく成長を遂げていた。



かつて、当時の研究生の前に立ちはだかった黒く巨大な雨雲。

ドラフト制度に大組閣…。



だが彼女たちはくじけなかった。


不安定なブランク期間を乗り越えて松村香織、犬塚あさなを中心に様々なアイデアを持ち寄り、一から皆で作り上げた、伝説の『アップカミング公演』。常に次があるかどうかも定かでない状況でこの野心的な試みに満ちた新公演を大成功させたことは、ゆめちにとっても一筋の光明となりわたしの財産とも言えるほどの貴重な経験となったのだ。



『あのコールの嵐を絶対に忘れません。』



後にそう語られたように幕張での最後の握手会で実現した奇跡とも言えるアップカミングステージは異様な盛り上がりを見せた。再現されたヲタの完璧なミックス、全体から湧き上がる地鳴りのようなコールは正規メンバーをも巻き込んだ当時のこの公演の伝説的な”熱さ”を物語っていると言えるだろう。




▪ でも忘れない君がいたこと



MCを挟んで、僕は『枯葉のステーション』を予想していた。


だが、そこに現れたのはカラフルな花に彩られた6人のメンバー!井田玲音名、山田樹奈、福士奈央、都築里佳、そしてつい2日前に卒業公演を終えたばかりの元チームSリーダー矢方美紀!ゆめちと特に縁の深い、大好きなメンバーと披露されたのは


『コスモスの記憶』





この曲は4thシングル『1!2!3!4! ヨロシク!』のカップリングであり、ゆめちが『SKE加入前に一番好きだった曲』である。



(以下前略)


コスモスの花は  きっと知ってるだろう

ずっと 遠くで見てた 

僕は陽射しのように…

初恋の記憶は 気づかれない切なさ

でも忘れない君がいたこと



信号が赤になり 



トラックに追いついて



助手席の君が今  



泣きながら手を振った




コスモスの花は どこか淋しく見える 

何も言わずに揺れて 

季節 見送るだけさ

薄紅の記憶は 心の片隅で 

もういなくなる君の微笑み 

でも忘れない君がいたこと





彼女は親が転勤族であったことから、おそらくこれに近いイメージの経験や淡い記憶があるのかもしれない。


コスモスの花言葉は ”少女の純真” である。


まるで卒業にあたって、花を愛する彼女のために作られたかのようだ。



そしてこの詞は、見送る我々の心情にも見事なほどに重なる。この曲を聴くたびに、ときめきと切なさと…ほんのりとした胸の痛みが、その微笑みの記憶と共に蘇るのかもしれない。



▪ 『私はこれからも踊り続ける』




『結婚するみたい!』


と思わず言葉が漏れるほどゆめちにぴったりなヴェール付きの真っ白な花冠に花束。



セレモニー冒頭、残念ながら不在となった松井珠理奈からSKE伝統のその”熱さ”を受け継ぎ、力を尽くしてくれたゆめちへのねぎらいと感謝、励ましのビデオメッセージが流される。


松村香織からの手紙では同じ研究生時代、犬塚あさなと共に6期生の育成に散々苦労した話や、その中でゆめちが常にリーダーシップを取ってきたこと、同期、竹内彩姫と共に身を削りながら数々のアンダーを務め、公演を支え続けてきたことなどが語られた。

ともに決して恵まれない境遇のなか、苦しみや喜びを共有してきた大切な仲間として「ゆめちのことは同期だと思っている」と語られるほどに濃密な時間をともにしてきたのである。

さらに天丼チェーン”てんや”への愛や、ゆめちならではの”炒飯キャラ”など、チャンスを掴もうと貪欲に自ら発信し続けたことなど、その奮闘ぶりが涙と笑いを交えながら読み上げられ、何とも言えぬ暖かい雰囲気に包まれる。


続いて、本人から高校を無事卒業できたこと、足のリハビリからもようやく解放されることが伝えられ、安堵したファンからの温かい拍手が送られた。


あらためて『真っ直ぐに、これがやりたいということが見つかったから』という希望ありきの卒業であることに加え



『私はこれからも踊り続ける』



『SKEとは違うステージにはなってしまうのですが、また別の世界で私の踊っている姿を見ていただけたらなって思ってます』


という力強い言葉を聞けたことが、ゆめちを惜しむ我々ファンにとって何よりの救いになったに違いない。



▪ 気づかされた、もっと大切なこと



『 SKEで最後の曲といえば、この曲!仲間の歌!』


冒頭のゆめちの言葉に続いて最後に紹介された曲は、SKEの賛歌とも言える『仲間の歌』







慣れ親しんだ『制服の芽』公演だけでなく、コンサートなどでも最後に歌われることが多いこの曲。『人の支えの大切さに気づいた』という彼女の、メンバーやスタッフ、出会ってくれた全てのファンへ向けたストレートな想いを代弁する1曲だろう。


さらに、ゆめちにとっては2014年の夏、美浜海遊祭において犬塚あさなと共に正規メンバーへの昇格発表後に嬉し涙があふれる中、披露された思い出深い1曲でもある。


『確かに、総選挙ランクインや、同期が次々と手にしつつあるシングル選抜というポジションを手にすることができなかったのは、やり残したことかもしれない』


セレモニーでもそう語った彼女だが、その実に晴れやかな笑顔は…48グループメンバーであれば誰しも避けることのできない過酷な状況のなかで、学業との両立で何度もくじけそうになりながら…時に喜び、時に苦悩し、葛藤し続けたその過程において



『もっと大切なことに気付けた』



という”悔い” を越える ”大いなる感謝” に満ちあふれていた。



これはちょうど、秋元康の『365日の紙飛行機』の歌詞にも重なる。




その距離を競うより

どう飛んだか

どこを飛んだのか

それが一番大切なんだ

さあ 心のままに

365日




僕たちは知っている。



ゆめちが、どんな想いで『どう飛んだか、どこを飛んだのか』を!

我々ファンに対しても『もっと大切なこと』を気づかせてくれたのは、あなたです!!




ゆめち!4年間、本当に本当にありがとう!!!